ベヘール・デ・ラ・フロンテーラの街で体験する、クリスマスの奇跡
クリスマスが近づくこの季節に紹介したい町が、スペイン・アンダルシア地方のベヘール・デ・ラ・フロンテーラ（Vejer de la Frontera）です。真っ白な壁の家々が並ぶ風景から「白い壁の街」として知られる町です。私も、ある冬の日に家族とともにこの白い壁の町を訪れました。すると偶然にも、住民たちが衣装をまとって演じるキリスト降誕劇(ベレン) が行われていたのです。降誕劇(ベレン) とは、イエス・キリストの誕生シーンを再現する主にクリスマスシーズンに行われるスペイン(特にアンダルシア地方)の伝統行事のことです。細部まで丁寧に再現されたその光景は、まるで2000年前のベツレヘムの町に迷い込んだかのようでした。みなさんもぜひ、街中を歩きながら伝統的なクリスマスの雰囲気を感じてみてください。
アンダルシアの伝統行事「ベレン・ビビエンテ」
スペイン各地でクリスマスシーズンには「ベレン（降誕劇）」が行われますが、通常は人形を使った展示型です。ところがアンダルシアでは、「生きたベレン」、という意味のベレン・ビビエンテが伝統行事として根付いています。住民自身が衣装をまとい、町全体を舞台に演じる体験型の降誕劇です。ベヘール・デ・ラ・フロンテーラでは、200人以上の地元住民が子どもからお年寄りまでが当時の衣装を身にまとい、羊飼いや商人、兵士、農夫、村人、そしてヨセフやマリアなどの役を演じます。まるで町全体が物語の一部になったかのようです。
聖書の場面を再現
ベツレヘムを再現した町を歩いていると、どこからか物々しい音が聞こえてきました。振り返ると、兵士に扮した人たちが杖で地面を打ち鳴らしながら行進しています。彼らは、王の命令を受けて赤ちゃんイエスを探すという、聖書の一場面を再現しているのです。村人に扮した人々は、行進する兵士たちのそばでドラムを叩き、歌を歌いながら重々しい雰囲気を漂わせていました。さらに歩みを進めると、町の風景は受胎告知など、さまざまな聖書の場面に移り変わっていきます。狭い路地を抜けるたびに新しいシーンが現れ、まるで私たちも物語の登場人物の一人になったような気分になりました。
まるでタイムトリップしたよう！当時の人々の暮らしがよみがえる
散策はまだまだ続きます。聖書に基づくシーンだけでなく、当時の生活を再現したエリアもあります。どれも非常にリアルで、まるで2000年前のユダヤの町にタイムトリップしたかのような気分になります。例えば、洗濯板を使って洗濯するシーンや、焚火でスープを作る日常生活のシーン、かご職人がかごを作る手工芸のシーン、生の肉やチーズ、ナッツを売る商人がいる市場のシーンなどがあります。本当に丁寧に再現されているので、シーンごとにじっくり見て回ることをおすすめします。
クライマックスのイエス誕生シーン
そしてついに、一番の見どころ、イエス誕生のシーンがやってきます。お腹の大きなマリアを乗せたロバを引いて歩くヨセフの姿が見え、やがてマリア役が赤ちゃんを抱いたマリアと交代。ヨセフと並んで、誕生の場面を華やかに彩ります。キリスト教にそれほど詳しくない私でも、街全体を包む祝福の空気と、住民たちの熱気に触れ、クリスマスの意味を肌で感じることができました。心に深く残る、素敵な伝統行事でした。
ベヘール・デ・ラ・フロンテーラまでのアクセス
ベヘール・デ・ラ・フロンテーラの「ベレン・ビビエンテ」は、毎年12月に旧市街の城壁内（Recinto Amurallado）で開催されます。開催日やスケジュールは毎年変わるため、公式サイトで確認しましょう。アクセスの方法としては、電車が通っていないためバスを利用します。ベヘール・デ・ラ・フロンテーラ（Vejer de la frontera）のバスターミナル（Estación de Autobuses）から徒歩約10分で旧市街に到着します。旧市街は坂道が多いため、歩きやすい靴での散策がおすすめです。街を歩きながら、クリスマスの伝統と歴史を楽しめる「ベレン・ビビエンテ」。冬のアンダルシア旅行にぴったりの体験です。
