『フランダースの犬』にも登場する「アントワープ聖母大聖堂」

少年ネロと愛犬のパトラッシュが登場する童話『フランダースの犬』にも登場するのが、「アントワープ聖母大聖堂」です。ネロが憧れたルーベンスの作品を中心として様々な絵画が展示されています。ベルギーでは、フランス語が公用語として用いられた時期もあるため、「聖母大聖堂」ではなく、「ノートルダム大聖堂」と呼ばれることもあります。
遠くからでも存在感溢れる「アントワープ聖母大聖堂」

約170年の歳月をかけて1521年に完成したベルギー最大のゴシック様式の聖堂が、「アントワープ聖母大聖堂」です。1999年には、「ベルギーとフランスの鐘楼群」の一つとしてユネスコの世界遺産に登録されています。塔の高さは123mにも及び、写真ではその全容を収め切れないほどの壮大さです。アントワープ中央駅から徒歩約20分の場所にありますが、その尖塔は市内の様々な場所から見ることができ、遠く離れていてもその存在感を放っています。繊細な彫刻が施されたファサードや、鐘楼の細部まで緻密に造り込まれたデザインは、建築ファンにとっても見逃せない見どころです。毎正時に響く鐘の音も、街に荘厳な響きを届けています。
大聖堂の前に建つルーベンスの銅像

大聖堂南側に位置するグルン広場には、大聖堂を背景にベルギーの彫刻家ウィレム・ギーフ作の、フランドル絵画の巨匠と呼ばれるピーテル・パウル・ルーベンスの像が聳え立っています。ルーベンスは、1577年6月28日にドイツ・ジーゲンで生まれ、1640年5月30日にアントワープで亡くなっています。その作品は宗教画から神話画、肖像画に至るまで多岐にわたり、アントワープの文化と芸術の象徴ともいえる存在です。広場ではルーベンスの功績を称えるイベントも時折開催され、地元の人々にも親しまれています。
ステンドグラスから光が差し込む美しい空間

「アントワープ聖母大聖堂」の内部は、周囲が白壁で囲まれており、48本の優雅な柱によって堂々とした空間が支えられています。それぞれの柱には、ルーベンスをはじめとする著名な画家によって描かれた宗教画が飾られており、美術館に来たような感覚に包まれます。祭壇前には金細工の装飾や彫刻も施され、細部に至るまで芸術性の高さが感じられます。観光客によって混雑することは珍しく、厳かな静けさの中で絵画や建築美をじっくりと堪能できます。天井から吊るされたシャンデリアや微かに響く足音も、その静寂さをより際立たせています。

アントワープ聖母大聖堂は、天井が高く、荘厳な雰囲気に包まれた空間です。特に目を引くのが、美しい装飾が施された数多くのステンドグラスです。聖書の物語や聖人たちの姿が色鮮やかに描かれ、訪れる人々を魅了します。光が差し込むと、赤や青、緑の色彩が床や柱に反射し、まるで教会全体が絵画の中にあるかのような幻想的な雰囲気に包まれます。中には16世紀から残る貴重な作品もあり、宗教芸術としての価値も高く評価されています。
ルーベンスの傑作など、迫力ある数々の絵画

ネロが憧れていた2枚の祭壇画のうちの1枚が、ルーベンスによって描かれた、こちらの『キリスト昇架』です。三連祭壇画の中央左下に描かれている犬のモデルが、ルーベンスが飼っていた愛犬の「パトラッシュ」だったことからネロの愛犬も「パトラッシュ」と名付けられたとされています。『キリスト昇架』は、元々は、シント・ヴァルブルヒス区教会の祭壇画として描かれたものです。


それぞれの柱には、ルーベンスの作品以外にも多くの宗教画が飾られており、大聖堂全体がまるで美術館のような趣を持っています。マールテン・デ・フォスやフランス・フロリス、コルネリス・スフトといったフランドルの画家たちの作品が並び、聖書の物語や聖人たちの姿を力強く描き出しています。これらの絵画はそれぞれ独自の様式で描かれており、ルーベンスの劇的な表現とはまた異なる深みを感じさせてくれます。荘厳な空間の中で絵画を眺めると、美術と信仰が一体となった空気がひしひしと伝わってきます。ギフトショップでは絵画に関連した様々なグッズも販売されています。
【アントワープ聖母大聖堂】
住所:Groenplaats 21, 2000 Antwerpen, Belgium
アクセス:アントワープ中央駅から徒歩約20分
営業時間:月曜~金曜:10時~17:時、土曜:10時~15時、日曜:13時~17時
公式サイト:www.dekathedraal.be/en