アンコール遺跡群を効率よく観光する方法ー前半

世界遺産のアンコール遺跡群を2度訪れた筆者が、効率的な周り方を前半と後半に分けて解説します。まず最初に「アンコールチケットオフィス」で入場パスを購入しましょう。パスは1日・3日・7日の3種類がありますが、見どころが非常に多いため、初めての方には3日券をおすすめします。このチケットはアンコール遺跡群だけでなく、ロリュオス遺跡群にも有効なので、2日間でアンコール遺跡群を巡り、もう1日でロリュオス遺跡群を訪れると充実した観光ができます。アンコール遺跡群を観光する際はトゥクトゥクをチャータするのが一般的です。目安としてですが、8時間で30ドルくらいの費用感です。ここからは、アンコール遺跡群を訪れる1日目におすすめのコースを、回る順番に沿って紹介していきます。10時頃に最初の場所に着けば1時間程、ランチの時間にしても全ての場所を周ることができますよ。
カンボジアの象徴アンコールワット

まずは、カンボジアを代表する世界遺産「アンコール・ワット」です。他の遺跡群をよりも一番最初に行くことをおすすめします。というのも、同じような石造りの寺院が数多く点在しているため、先に他の遺跡を見てしまうと、シェムリアップの醍醐味のアンコール・ワットの感動がやや薄れてしまう可能性があるからです。アンコール・ワットは12世紀前半にスールヤヴァルマン2世によって建立されたヒンドゥー教寺院で、のちに仏教寺院としても信仰を集めています。中央祠堂は高さ65メートルに達し、五つの塔が蓮のつぼみを模した形でそびえる姿は国旗にも描かれるカンボジアの象徴。全長800メートルに及ぶ回廊には、乳海攪拌や戦闘などを題材にした精緻なレリーフが刻まれ、緻密な彫刻を目の前にすると、約900年も前に作られたとは思えないほど鮮明で驚かされます。参道前の池に寺院がシルエットとなって映し出される光景はとても印象的です。広いので観光の時間としては2時間以上は確保するのをおすすめします。アンコール・ワットはサンライズのスポットとしても人気のため、他の遺跡群は7時30分からの入場が多いですが、5時から入場できます。「アンコールチケットオフィス」も5時からオープンしています。
「クメールの微笑」バイヨン寺院

バイヨン寺院は、12世紀末にジャヤヴァルマン7世によって建立された仏教寺院です。最大の特徴は、塔の四方に刻まれた巨大な仏顔像。穏やかに微笑むその姿は「クメールの微笑」とも呼ばれています。寺院全体では200を超える顔の数で、どこから見ても視線を感じるような独特の雰囲気があります。アンコール遺跡群を見ていると石造建築は似て見えがちですが、巨大な仏像顔がこれほど多く刻まれた建築は他にはないので、バイヨン寺院は絶対に行って欲しい場所です。観光の時間としては1時間位が目安だと思います。

アンコール遺跡群の全てのスポットには上の写真のような石板があります。トゥクトゥクのドライバーがちゃんと目的地に連れてきてくれているかこれで確認をしてください。また、目的地の直ぐ近くにこの石板があることもあるので、時間に余裕がある方は、一緒に観光するのをおすすめします。「ガイドブックなどに「アンコール・トム」と書かれていますが、「アンコール・トム」とはジャヤヴァルマン7世が築いた東西3km、南北3kmの城壁に囲まれた巨大な城塞都市で「バイヨン寺院」と後に紹介する「像のテラス」や「ライ王のテラス」もその一部です。私は最初、「アンコール・トム」という名前の建物があるのかと勘違いしていました。
像のテラスとライ王のテラス

アンコール・トムの王宮前に広がる「像のテラス」は、全長約350メートルにも及ぶ巨大なテラスで、かつて王が閲兵や儀式を行った舞台として使われていました。壁面には象が行進する姿やガルーダ、獅子などの浮彫が刻まれ、当時の壮大な光景を想像させてくれます。さらに像のテラスのすぐ北側には「ライ王のテラス」もあり、こちらはびっしりと刻まれた神々やナーガの彫刻が見どころ。2つセットで観光して時間としては約30分位でまわれます。
「空中宮殿」バプーオン

バプーオンは、アンコール・トムの中心部にある11世紀のピラミッド型寺院で、「空中宮殿」とも呼ばれています。高さ約34メートルの大規模な三層構造で、長い参道の先にそびえる姿は圧巻です。当初はヒンドゥー教のシヴァ神を祀る寺院として建立されましたが、のちに仏教寺院に改修され、西側の壁面には全長60メートルもの巨大な寝釈迦仏のレリーフが刻まれました。長い間崩壊して立ち入り禁止となっていましたが、20世紀末から修復が進められ、現在は頂上まで登ることができます。急な階段を上がると、アンコール・トムの森とバイヨンをみることができ、とてもいい眺めです。観光の時間としては、30~40分程が目安です。
「聖なる剣」を意味する仏教寺院プリヤ・カーン

プリヤ・カーンは、12世紀末にジャヤヴァルマン7世によって建立された大規模な仏教寺院で、アンコール・トム北門から少し離れた場所にあります。名前は「聖なる剣」を意味し、王が戦勝を記念して建てたと伝えられています。敷地は広く、回廊や祠堂が複雑に入り組み、まるで迷路のようです。崩れかけた石造建築と、壁や屋根を覆う巨大なガジュマルの木が神秘的な雰囲気を醸し出しています。バイヨンやアンコール・ワットに比べると観光客はやや少なく、ゆったり探索をできるのも魅力。通路には当時の彫刻やデヴァター像も多く残され、写真撮影スポットとしても人気です。30〜45分程の観光の時間が目安です。
夕日スポット、プノン・バケン

プノン・バケンは、アンコール遺跡群の中でも人気の夕日スポットとして知られるピラミッド型寺院です。9世紀末、ヤショーヴァルマン1世によって建立され、アンコール初期の都・ヤショーダラプラの国家寺院として機能しました。高さ約70メートルの丘の上に建ち、頂上からは360度の眺望が広がります。特に西側にはアンコール・ワットを遠望でき、夕暮れ時には多くの旅行者が訪れて幻想的な景色を楽しみます。遺跡自体は7層のピラミッド構造を持ち、頂上の祠堂に至るまで急な石段を登る必要があります。人気の時間帯には入場規制がかかることもあるため、日没の1時間前には到着しておくのがおすすめです。夕日だけでなく、朝日や日中の景観も美しく、アンコールの大地を一望できる絶好のビューポイントです。プノン・バケンは他のアンコール遺跡群よりも1時間程遅くまで開いています。
ナイトマーケットで街の雰囲気を体感

アンコール遺跡群を周った後は夜にはナイトマーケットに行って活気にあふれた現在の街の様子を体感してみてください。アンコール・ナイトマーケットやアートセンター・ナイトマーケットなど複数のナイトマーケットが徒歩圏内にあります。シェムリアップならではの雑貨や衣類、スパ用品や絵画が多くあり、お土産を買うには最適です。屋台も多く出ているのでローカルフードも味わえます。遺跡巡りで疲労がたまった方は、マッサージ屋も多いので疲れを癒すこともできますよ。