アンコール遺跡群を効率よく観光する方法ー後半

世界遺産アンコールワットの記事キャッチ後半

アンコール遺跡群を2度訪れた筆者が、前回に続いて2日間で周る際のおすすめのルートの2日目を紹介します。午前9時頃に出発すれば全部の場所を周ることができます。アンコール遺跡群の観光で2日の日程を組むように前半と後半で2回に分けて解説をしていますが、1日しか予定を組めない方は、「アンコール・ワット」、「バイヨン寺院」、「タ・プローム」のこの3つは必ず行くようにしてください。

目次

無骨さが際立つタ・ケウ

タ・ケウ遺跡
タ・ケウ遺跡

タ・ケウ遺跡は、10世紀末〜11世紀初頭に建てられたヒンドゥー教の寺院で、スーリヤヴァルマン1世の時代に着工されました。アンコール遺跡群の中では珍しく、装飾彫刻がほとんど施されていないのが特徴です。そのため「彫刻のない寺院」とも呼ばれています。建築様式は山岳寺院型で、5つの祠堂がピラミッド状の基壇に配置され、中央祠堂へは急勾配の石段を登る必要があります。この高さと角度はなかなかのもので、登るには少し苦労しますが、上からは遺跡群を見渡すことができ、達成感もひとしおです。未完成のまま工事が止まったため、素材そのものの無骨さが際立っています。石段を全部登るかでも変わりますが、観光の時間としては30~40分が目安です。

バンテアイ・クデイ

バンテアイ・クデイ
バンテアイ・クデイ

バンテアイ・クデイは、12世紀末にジャヤヴァルマン7世が建てた仏教寺院。名前は「僧侶の砦」を意味し、かつては多数の僧が住んでいたとされています。建築様式はバイヨン様式で、タ・プロームとよく似た創りですが、こちらの方が規模はやや控えめ。遺跡は東西に細長く、複数の祠堂と回廊、そして中央には十字型の礼拝堂が残っています。壁面には観音菩薩やアプサラ(天女)の彫刻も見られ、宗教的な儀式が行われていた雰囲気も感じられます。石材の劣化が激しく、崩壊が進んでいる部分も多いですが、そのぶん修復前の“ありのまま”の遺跡の姿を観察できる貴重な場所でもあります。保存状態に差がある分、造られた時代の変遷を感じられるのもポイントです。見応えがありやや広いので観光の時間としては、40~50分程が目安です。

印象的な色合いのプラサット・クラヴァン

プラサット・クラヴァン
プラサット・クラヴァン

プラサット・クラヴァンは、921年に建立されたヒンドゥー教寺院で、アンコール遺跡群の中でも比較的古い部類に入ります。レンガ造りの五つの祠堂が横一列に並ぶという珍しい構造を持ち、規模は小さいながら独自の存在感を放っています。他のアンコール遺跡と色が違って印象的でしたが、アンコール初期の建築ではレンガを多用していたが、後期になるにつれて砂岩が主流になったとめのようです。名前の「クラヴァン」は「カルダモンの木」を意味すると言われています。最大の見どころは、中央祠堂内部に残るレリーフ。レンガを削り込んで彫られたヴィシュヌ神と女神ラクシュミーの姿は、アンコール遺跡群の中でも非常に珍しく、保存状態も良好です。特に「ガルーダに乗るヴィシュヌ神」や「多腕で立つヴィシュヌ神」の像は必見で、小さな寺院ですが、訪れる価値はあります。観光の時間としては15分程でいいと思います。

「王の沐浴池」スラ・スラン

スラ・スラン
スラ・スラン

スラ・スランは、「王の沐浴池」とも呼ばれる巨大な人工貯水池で、10世紀にラージェンドラヴァルマン2世によって造られ、その後、ジャヤヴァルマン7世の時代に現在の形へと整備されました。長辺約700メートル、短辺約350メートルの広大な池は、かつて王族や僧侶が沐浴を行う神聖な場所だったとされています。池の西岸には美しい十字型のテラスがあり、ナーガ(蛇神)の欄干や獅子像が設置されています。早朝には水面が朝日に照らされ、静かな水辺の風景が楽しめるスポットとしても人気。現在も池には水が張られ、雨季には水面が一面に広がって神秘的な雰囲気に包まれます。敷地内を歩き周るような場所ではないので、観光の時間としては15分以内が目安です。午前9時頃から今回紹介するルートで観光をスタートさせた場合、ここを訪れた後にちょうど、昼食にちょうどいい時間になっていると思います。近くには観光客向けのレストランや屋台が複数あり、私もトゥクトゥクのドライバーに周辺のレストランに案内されました。

観光客にも人気、神秘的なタ・プローム

タ・プローム
タ・プローム

タ・プロームは、12世紀末にジャヤヴァルマン7世が母の菩提を弔うために建てた仏教寺院。遺跡全体が巨大な樹木の根に覆われていることで有名で、映画『トゥームレイダー』のロケ地としても一躍有名になりました。他のアンコール遺跡と異なり、タ・プロームでは修復の際に自然との共存を重視し、あえて木の根をそのまま残しています。崩れかけた祠堂の上に伸びる根や、壁を貫通するような枝ぶりは、まるで自然が寺院を飲み込んでいるかのような迫力。観光客も多く、人気の撮影スポットになっています。敷地は東西に細長く、回廊や祠堂が複雑に入り組んでいて、意外と歩きごたえもあります。今回紹介するルートでは、やや混雑する時間帯にあたってしまいますが、入場できずに何時間も列を作るということはないです。混雑を避けたい場合は午前中の早い時間か、夕方近くがおすすめです。アンコール遺跡群の中でも“神秘的”という言葉が一番似合う場所で、ジブリの「風の谷のナウシカ」や「「もののけ姫」のような雰囲気と表現されることも多いです。観光の時間としては1時間程が目安です。

東メボン

東メボン
東メボン

東メボンは、10世紀にラージェンドラヴァルマン2世が建立したヒンドゥー教寺院。かつては「東バライ」という巨大な人工湖の中央に浮かぶように建っていて、“水の上の寺院”として特別な存在でした。現在は湖が干上がり、陸地の上に遺跡が残っていますが、当時の姿を想像しながら歩くと不思議な感覚に包まれます。三層の基壇の上には五つの祠堂が建ち、四隅には象の石像が今も残されています。保存状態が良く、力強い象の姿は遺跡のシンボルのひとつ。基壇の階段は急ですが、登ると周囲の広大な風景を望むことができ、風が抜けて気持ちいい場所です。遺跡自体はそれほど大きくないので、30分程度で見学できます。

夕日のスポットとしても人気のプレ・ループ

プレループ
プレループ

プレ・ループは、10世紀にラージェンドラヴァルマン2世によって建立されたヒンドゥー教寺院で、王の火葬が行われたとも伝わる場所です。赤茶色のレンガと砂岩で造られた三層の基壇が特徴で、上層には五つの祠堂が並びます。名前の「プレ・ループ」は「死者の身体を回す」という意味を持ち、火葬儀礼に由来すると言われています。基壇の石段は非常に急ですが、登り切れば周囲の平原を一望でき、開放感は格別。特に夕暮れ時は遺跡全体が赤く染まり、アンコール遺跡群のサンセットスポットとしてプノン・バケンに次ぐ人気を誇ります。なお、閉館時間は変わる場合があるので現地で確認をして欲しいですが、私が訪れた際は他の遺跡が17時30分で閉まる中、プノン・バケンとプレ・ループは1時間ほど遅くまで開放されていて、夕日鑑賞を楽しむことができました。

遺跡巡りの後にパブストリートでカンボジアの発展を感じよう

パブストリート
パブストリート

ナイトマーケットと並んでシェムリアップの夜を象徴する観光名所といえば「パブストリート」。アンコール遺跡群の観光を終えた旅行者が集まる繁華街で、通りの両側にはバー、レストラン、屋台がびっしりと並び、夜になるとネオンが輝いて活気に包まれます。食事はクメール料理から西洋料理まで幅広く、1ドルビールや屋台の串焼きなど手頃な価格帯も魅力的で遺跡観光とはまったく違うにぎやかな空気を味わえます。映画撮影の際に世界的に有名な俳優達が立ち寄ったことを売りにしているお店もいくつかあります。2000年代初期に訪れて以来、約20年ぶりにシェムリアップを再訪した私が一番驚いたのが「パブストリート」の賑やかな雰囲気でした。街の発展とはこういうことをいうんだなと驚きました。当時はまだガイドブック等でも治安が不安視され、このようなエリアは無かったですが、現在は開放的で治安の不安も感じさせない雰囲気でした。

【アンコール・チケット・オフィス(アンコール・エンタープライズ)】

チケット価格:1日37$、3日62$、7日72$ ※2025年9月

公式サイト:https://www.angkorenterprise.gov.kh/

チケットオフィスの他にオンラインでの購入も可能です。

SELECTION―セレクション―