アンダルシアの丘に輝く白い街、アルコス・デ・ラ・フロンテーラ

アルコス・デ・ラ・フロンテーラは、スペインのセビリアから南へおよそ70kmの場所にあります。かつてはイスラム王朝とキリスト教王国との国境（フロンテーラ）にあった、歴史ある町です。町の名前「アルコス（Arcos）」は「アーチ」を意味し、門や建物に見られる美しいアーチ装飾が多いことから、その名が付けられたといわれています。断崖の上に築かれた旧市街には、迷路のように入り組んだ細い路地と白い家々が続き、どこを歩いても絵になる風景ばかりです。道端で知り合い同士がばったり会い、挨拶から井戸端会議が始まる――そんな光景を何度も目にした温かい街です。

丘の下から旧市街へと続く長い坂を登ると、15〜16世紀にかけて建築・改修された サンタ・マリア教会（Basílica Menor de Santa María de la Asunción） にたどり着きます。教会内部では、精巧な彫刻や装飾、ステンドグラスなど、キリスト教美術の美しさをじっくり堪能できます。次に訪れてほしいのが、教会に隣接する鐘楼です。狭く急な階段を上ると、眼下には息をのむほど美しいパノラマが広がります。ある方向には、グアダレーテ川がゆるやかに蛇行する緑の大地が続き、遠くには丘陵地帯が連なります。別の方向を見ると、太陽の光を浴びた白い家々が宝石のように輝き、思わず息をのむほどです。

絶景を楽しんだ後、白い街の石畳の道を歩いていると、小さなかご作りの工房を偶然見つけました。中では職人さんが手際よく椅子やかごを編む姿が見えます。さらに、陶器の店では職人さんがろくろを回して食器を作る様子が見られ、この地域の伝統文化を垣間見ることができました。真っ白な壁の家々は外から見るとシンプルですが、入り口の柵越しには美しいパティオ（中庭）が広がっています。なかでも一般に開放されていた広い中庭は、真夏の太陽にも負けない鮮やかな緑に包まれ、清々しい気分になります。アルコス・デ・ラ・フロンテーラは、白い街並みの美しさだけでなく、職人の技や中庭文化など、伝統を感じる魅力的な街です。

まるで迷路のように入り組んだ、真っ白な狭い路地を歩いていくと、「Bésame en este Arco（このアーチでキスを）」 という写真映えスポットの小さなアーチが現れます。アーチをくぐると、目の前に谷の景色が一望でき、インスタ映え間違いなしの絶景が広がります。また、路地沿いのカフェやお土産屋さんを巡るのも楽しみのひとつです。私たちは、地元産の山羊チーズや伝統菓子など、ローカルフードが並ぶお店に立ち寄り、おいしいお土産をあれこれ選びました。かわいいお店が多く、つい立ち寄りたくなってしまいます。

アルコス・デ・ラ・フロンテーラへは、ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ空港から車で約30分、セビリアからは約1時間半です。公共交通を利用する場合は、空港のバス停から市内バスターミナル（Estación de Autobuses de Jerez de la Frontera）まで約20〜30分。そこから、バス会社Damasなどの路線でアルコス・デ・ラ・フロンテーラ（Estación de Autobuses de Arcos de la Frontera）へ向かいます。セビリア駅（Santa Justa）から列車でヘレス駅まで約1時間。駅からバスに乗り換えれば、レンタカーがなくても訪れることができます。アンダルシアの白い村々の中でも特に美しいこの街、ぜひ足を運んでみてください。