首都ハバナとは全く違う風景、キューバの世界遺産ビニャーレス渓谷

キューバの世界遺産ビニャーレス渓谷

キューバの首都ハバナは、スペイン統治時代の面影が残るカラフルな街並みで、人も多く音楽とダンスで賑やかな雰囲気です。しかし、数時間だけ車を走らせればその喧騒を離れて、まったく別の風景が広がります。今回は世界遺産にも登録されているビニャーレス渓谷を紹介します。

目次

キューバの世界遺産ビニャーレス渓谷への行き方

世界遺産ビニャーレス渓谷
世界遺産ビニャーレス渓谷(photo by 写真AC)

ビニャーレス渓谷へは、首都のハバナからは距離にして約180km、車での移動時間は約2時間半から3時間なので、ハバナからの日帰りもできます。ハバナからは旅行者向けのバスやツアーが多く出ているので、手軽にアクセスできます。例えば、バス会社の「ヴィアスール(Viazul)」は、比較的リーズナブルな料金で運行しているため、観光客にも評判です。また、より自由度の高い旅を望むなら、タクシー・コレクティーボ(乗合タクシー)を利用するのもおすすめ。数人でシェアすればコストも抑えられ、途中で立ち寄りながらの移動も可能です。キューバらしいローカルな空気を感じながら、風景が徐々に田園へと移り変わる様子も魅力のひとつです。

キューバの世界遺産ビニャーレス渓谷とは

キューバのビニャーレス渓谷
キューバのビニャーレス渓谷(photo by 写真AC)

ビニャーレス渓谷は、1999年にユネスコの世界遺産(文化的景観)に登録されました。最大の魅力は、モゴーテと呼ばれる丸く隆起した石灰岩の山々と、緑豊かな田園地帯が織りなす独特の風景です。数百万年をかけて自然が作り上げたこの地形は、まるで太古の地球を旅しているかのような感覚を与えてくれます。また、ビニャーレスには伝統的な農業や素朴な集落が今も息づき、ゆったりとした時間が流れています。観光地化が進む中でも、ビニャーレスは自然と共に暮らす人々の姿を感じられる貴重な場所で、トレッキングや乗馬、洞窟探検などを通じて、自然と触れ合う旅を楽しむことができます。広大な自然の風景ですが、ビニャーレスの町にはカーサ・パルティクラルという民泊のような宿泊施設がある他、丘の上にはホテルもあります。ロス・ハスミネスホテルの敷地には、ロス・ハスミネス展望台があり、そこからはビニャーレス渓谷の絶景を見ることができます。

【ロス・ハスミネスホテル(展望台)】※2025年11月更新

●住所:Carretera a Viñales Km 33, Viñales, Pinar del Río

●アクセス:ビニャーレスの町中心部から車で約5~7分、

●WEBサイト:www.cubanacanhoteles.com/en/destinations/vi%C3%B1ales/horizontes-los-jazmines

ビニャーレス観光の目玉、先史時代の壁画(ムラル・デ・ラ・プレヒストリア) 

モラレスの壁画
先史時代の壁画(ムラル・デ・ラ・プレヒストリア) (photo by 写真AC)

ビニャーレス渓谷の観光の目玉のひとつが、ビニャーレス渓谷内のドス・エルマナス渓谷にある「先史時代の壁画(ムラル・デ・ラ・プレヒストリア) 」です。この壁画は、1961年にキューバの画家レオヴィヒルド・ゴンサレス・モリージョの指揮の下で20人ほどのメンバーで約4年の歳月をかけて制作されました。壁画全体は、人類と生物の進化をテーマとして鮮やかな色彩と大胆な線で描かれ、自然の中にあるとは思えないほどインパクト大です。中でも目を引くのが、鮮やかな黄色で描かれた大きな動物。一見するとクマのようにも見えますが、これは“ナマケモノの祖先”とされる巨大哺乳類メガテリウムをモチーフにしていると言われています。特徴的な前脚の形や体のバランスから古生物であることが伝わってきます。

モラレスの壁画のアンモナイト

アンモナイトの壁画
アンモナイトの壁画(photo by 写真AC)

こちらは、岩肌に描かれた鮮やかなカタツムリのような模様です。このユニークな螺旋模様は、実は古代の海に生息していた化石生物「アンモナイト」をモチーフにしたものです。カリブ海の地層や石灰岩の丘が連なるビニャーレス渓谷では、かつて海底だった証拠として、こうした化石が実際に発見されることもあります。壁画ではその進化の始まりを象徴するかのように、岩壁の低い位置に描かれています。この巨大な壁画は、ビニャーレス渓谷の地質学的・生物学的な進化の過程を表現することを目的としていて、恐竜や、巨大な海洋爬虫類や初期の人類も描かれています。

ビニャーレス渓谷はキューバ葉巻の産地

葉巻の産地ビニャーレス渓谷
葉巻の産地ビニャーレス渓谷(photo by 写真AC)

ビニャーレス渓谷は、世界的にも有名なキューバ葉巻の産地としても知られています。渓谷内には、この写真のような素朴な藁葺き屋根の小屋が点在しています。これらはタバコの葉を自然乾燥させるための“セカデロ(乾燥小屋)”です。家族経営の農家では、今も昔ながらの有機農法が守られ、牛で耕す畑や手作業での収穫風景が見られます。観光客向けのツアーには、こうした葉巻農園への訪問が組み込まれていることが多く、現地農家の説明を聞きながら栽培や発酵、葉巻の巻き方の工程を学ぶことができます。現地で手巻きされた葉巻は商業品とは異なり化学処理をしていないナチュラルな香りが特徴でお土産としても人気です。

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